何周走っても無駄?走行練習とは

サーキットでの走行練習は人によって方法が様々です。中には延々とバッテリーが無くなるまで周回を重ねる人もいます。果たしてそれが最も効率的な練習方法なのでしょうか。練習というからには何かが上達しなければいけません。そのために何度も繰り返し行うのが練習なのです。RCカーにおける上達のための練習とは果たして周回を重ねることなのでしょうか。

エムズサーキットでN6クラス(ベアリングとタイヤ以外は無改造)を走らせた場合、12秒台がひとつの目標となります。このタイムが出るころには何周もぶつけずに走行できるようになっているはずです。こうなると面白くなって何周でも走りたい気持ちが強くなります。自分が何秒で走っているのかとても気になるようになり、10周ほど走ってはラップタイムを確認します。たまに出ている11秒台のタイムに上達した実感を味わいます。では、そこから先はどうやって練習すればよいのでしょうか。

11秒台が見えてくると、ようやく自分のマシンと他の人との違いが気になってきます。他のクラスなら色んなオプションを付けていますが、N6はなにも改造できないクラスです。10秒台で走っている人はなにが違うのかマシンを見ても分かりません。結局練習しかないと考え、ひたすら周回を重ねていきます。「自分もそのうち10秒台に突入する」そう信じて練習を続けます。しかし何を練習すればよいのか知らずに練習しても絶対に上達しません。

実はサーキットにおいて重要なのは、他の人の走りが見れるということなのです。ここはひとつ走らせてばかりいないで、速い人の走りを一度じっくり観察してみましょう。

仮に12秒台で周回できる人を初心者、11秒台を中級者、10秒台を上級者とします。中級者と上級者の違いは何でしょう。それを観察するのです。中級者の人は、たまに10秒台も出るけれど12秒台になることもあります。上級者の人はずっと10秒台で走れます。どうしてそうなるのでしょう。中級者から上級者にステップアップするためには、実はある秘密があるのです。

サーキット走行には必ず「ライン取り」という言葉が出てきます。クルマが好きな人なら聞いたことがあるはずです。しかしこのライン取りを勘違いしていると上級者にはなれません。ライン取りとはサーキットを一番少ない距離で周回することではないのです。

コーナーを素早く短い距離で走るために「アウトインアウト」という考え方があります。コース幅を一杯に使ったレース車らしい豪快な走りです。これをそれぞれのコーナーに当てはめて走っているのです。ぶつけないようにコースの真ん中ばかりを走っている初心者と比べ速くて当たり前ですね。これができるようになる頃には、コーナーの侵入でスロットルは戻すのではなく緩めるようになり、インベタを走れるだけのステアリングの技術も身についているということです。これができればあなたも中級者です。ガンバって練習しましょう。
でもこれだけでは絶対に上級者にはなれません。上級者には更なる理論が待ち受けているのです。

RCサーキットでは長いストレート以外はコーナーの連続です。コーナーとコーナーの間に短い直線がある場合もありますが、コーナーの次が異なるRのついたコーナーといった場合も多く存在します。これを「複合コーナー」といいます。また、右コーナーと左コーナーが繋がっている「S字」と呼ばれる連続コーナー(左→右もあります)も必ず存在します。これらを速く走り抜けるにはアウトインアウト理論だけでは無理があるのです。

S字の場合は、インに寄るのを捨てる必要が出る場合があります。直線で駆け抜けられる緩いS字ならともかく、そうでない場合にはこれを読み取る技量が要求されるのです。

複合コーナーでは、アウトインアウトを守ったために脱出できなくなる場合があります。この場合もどこを通らなければ攻略できないのか慎重に吟味する必要があります。


一つひとつのコーナーをうまく抜けているように見える中級者と、それを平然と追い抜く上級者のライン取りの違いをじっくり観察してみてください。同じクラスで走っている場合、最高速は殆ど変らないのでコーナーで追い抜くことになります。中級者の理論では必ず詰まってしまうコーナーがあり、上級者はそれを絶対に見逃しません。何周か一緒に走っている間に、「この人はこのコーナーが完成していない」と見破られ、そのコーナーへ侵入する数コーナー前からスピードを乗せた走りにしてコーナーで行き詰った中級者を難なく抜き去ってしまうのです。

では上級者はどのような練習をしているのでしょうか。少しだけ上級者の秘密を公開します。

まずタイムは殆どの場合計測しません。上級者になると自分が何秒で走ったのか大体分かるようになっています。コーナーは一つひとつを考えずに2つあるいは3つ先まで考えた上で最も楽に走れるラインを探します。楽にと書いたのは実はとても重要なことで、無理すればできるというのは失敗することも多くあるということなのです。全コーナーを楽にクリアできないと不測の事態に対応できません。また楽に走っているからこそ必要なときには追い抜くことができるのです。

何周もグルグルと走っているだけのように見える周回練習でも、上級者はいくつかをセットにしたコーナーの抜け方を探っていることが多いのです。そのコーナーセットの練習のために周回して戻ってきているだけなのです。コース全体を見渡した上で、コーナーの一つひとつを「攻める」のか「捨てる」のか「コーナーと見なさない」のかを見極めていき、全てを完璧に仕上げていく練習をしている人が上級者なのです。

そして誰にも負けない速さを身に付けるのです。そうすればいきなり知らないサーキットに行っても、常連さん達に引けを取らない走りが可能になります。こうなることを「ラインが見えている」といいます。